2009年01月24日

ウルトラレバレッジETFに関する単純な誤解について

最近ウルトラレバレッジETFについて皆さんから良く質問を受けます。

その大部分は「ウルトラレバレッジETFがちゃんとインデックスをなぞっていない」という指摘です。

先ず事実としてウルトラレバレッジETF、とりわけショート型の商品は所期の設計通りの値動きをしていない場合が多いです。

次に一般論として「そのETFが大多数の投資家がインプリメント(実行)しにくいスキームになればなるほど、乖離が大きい」という傾向があります。

例えば:

S&P500をなぞる、ティッカーSPYというETFは乖離が少ないです。

でもS&P500より2倍動くETFだと乖離幅が大きくなります。

さらにベア型ETFでS&P500のマイナス2Xで動くというようなETFなら、通常乖離はもっと大きくなります。

それでは、一体、誰が乖離を発生させているのでしょう?

それは個人投資家です。

個人投資家がウルトラベア型のETFを購入する場合、殆んどの人はそのPCF(ポートフォリオ・コンポジション・ファイル)から計算される理論価格など、頓着しないと思います。

乖離が出ていても平気で注文を入れてしまうわけです。

別の言い方をすれば理論価格を手がかりに売買の判断がなされているのではなく、「人気」のあるなしで売買がなされているわけです。

こうした理論価格と場でついている価格の乖離を是正するのはETFのファンドマネージャーの仕事ではありません。それは指定参加者(AP)の仕事です。APとはオーソライズド・パーティシパントの略で、通常、証券会社などの機関投資家です。

彼らは乖離が生じていると見るや「割高になっているETFを売り、割安な原株を買う」などのバスケット取引をします。そしてそうやって確定した鞘を、実際に原株のバスケットをETF運用会社に持ち込み、ETFに変換することで儲けるのです。

或るETFが所期の設計とは違う動きになっているのは、そのETFの運用会社の側の問題ではなく、上記のような取引所の売買におけるアービトラージが上手く働いていないことが原因である場合が大半です。

それをETF運用会社のせいにするのは、そもそもETFという仕組みの根本にたいする理解が無いからです。

posted by 踏み上げ太郎 at 22:53| Comment(56) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月12日

アイシェアーズS&Pグローバル・ニュークリア・エネルギー指数 (NUCL)

原子力.jpg

来週、いよいよオバマ政権が誕生します。そこで「オバマ・ニューディール」に直接関係するようなETFをひとつ紹介します。アイシェアーズS&Pグローバル・ニュークリア・エネルギー指数(ティッカー:NUCL)がそれです。同ファンドは世界の原子力関連の銘柄に投資するETFで全体の約半分が電力会社の株式、残りが核燃料の会社、原子炉建設のエンジニアリング会社などから構成されています。主な保有銘柄は:

キャメコ(CCJ) 8.34%
エクセロン(EXC) 8.09%
パラディン・エナジー(PALAF.PK) 7.89%
イーオン 7.54%
ウラニウム・ワン 7.13%
マクダーモット(MDR) 6.68%

などとなっています。また同ファンドの資産の半分を占める電力会社株は所謂、公共株に分類され、一般に不況でも業績がそれほど落ち込まないディフェンシブな性格を持っています。

posted by 踏み上げ太郎 at 07:07| Comment(0) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月24日

アイシェアーズS&Pグローバル公共事業(JXI)

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アイシェアーズS&Pグローバル公共事業、ティッカー・シンボルJXIの組み入れ国の構成比のグラフです。
posted by 踏み上げ太郎 at 01:03| Comment(0) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アイシェアーズMSCIエマージング・マーケット(EEM)

EEM.jpg

アイシェアーズMSCIエマージング・マーケットETF(ティッカー:EEM)の国別組み入れ構成比のグラフを掲げておきます。
posted by 踏み上げ太郎 at 00:59| Comment(0) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月16日

ウルトラレバレッジETFがNY市場を撹乱?

大引け.jpg

最近米国では指数の2倍とか3倍値上がり・値下がりする、所謂、ウルトラ・レバレッジETFというのが人気になっています。

出来高の多い、代表的なものだけを挙げると:

UltraShort S&P500 ProShares ETF (SDS)
UltraShort Russell 2000 ProShares ETF (TWM)
UltraShort Real Estate RroShares ETF (SRS)
UltraShort QQQ ProShares ETF (QID)
UltraShort Oil & Gas ProShares ETF (DUG)
UltraShort Mid Cap 400 ProShares ETF (MZZ)
UltraShort Financials ProShares (SKF)
UltraShort Dow 30 ProShares (DXD)
UltraShort Basic Materials ProShares (SMN)

Ultra S&P 500 ProShares (SSO)
Ultra Russell 2000 ProShares (UWM)
Ultra Real Estate ProShares (URE)
Ultra QQQ ProShares (QLD)
Ultra Oil & Gas ProShares (DIG)
Ultra Financial ProShares (UYG)
Ultra Dow 30 ProShares (DDM)

などがあります。
これらのETFはエクイティー・スワップによって2倍ないしは3倍のレバレッジを実現しているわけですがスワップの提供者はカバーのために原株を手当てする必要があります。

最近は大引け前にこれらのウルトラ・レバレッジETFが買われたり、売られたりするケースが多く、それが大引け前に慌てて原株を手当てにゆく原因になっています。このため大引け直前30分の出来高は上のグラフのようにどんどん増えています。

個人投資家のトレーディングの対象となるウルトラ・レバレッジETFの多くはS&P500やナスダック(QQQQ)などのインデックスETFですが、金融、不動産、石油・天然ガスのセクターETFもかなり人気になっています。

結果としてそれらのセクターETFの指数に採用されている個別株のボラティリティーが極めて高くなるという現象が見られています。CFD取引のストラテジーを考える際に参考となる情報ではないでしょうか。
posted by 踏み上げ太郎 at 03:06| Comment(1) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月18日

ETFが活況

アメリカで取引される全株式売買高のうちETFの占める比率が10月に40%に乗りました。米国で最も多く取引されるトップ10銘柄のうち、実に8つがETFなのだそうです。

個別株とETF.jpg

posted by 踏み上げ太郎 at 10:53| Comment(2) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月16日

ウルトラ・レバレッジETF

ウルトラ・レバレッジETFという商品が話題になっています。
ディレクション(Direxion)という運用会社が最近発売した商品です。
実はこのファンドが出るまで、僕はディレクションという会社は聞いたことがありませんでした。何でも1997年の創業なのだそうです。創業社長のダニエル・オニール氏はもともとロシア専門のヘッジファンド、エルミタージュに居た人です。

現在のところディレクションは8本のウルトラ・レバレッジETFを出しています。
それらは:

大型株
ラージ・キャップ・ブル・3倍ETF(BGU)→ラッセル1000指数の300%
ラージ・キャップ・ベア・3倍ETF(BGZ)→ラッセル1000指数の−300%

小型株
スモール・キャップ・ブル・3倍ETF(TNA)→ラッセル2000指数の300%
スモール・キャップ・ベア・3倍ETF(TZA)→ラッセル2000指数の−300%

エネルギー株
エネルギー・ブル・3倍ETF(ERX)→ラッセル1000エネルギー指数の300%
エネルギー・ベア・3倍ETF(ERY)→ラッセル1000エネルギー指数の−300%

金融株
金融株・ブル3倍ETF(FAS)→ラッセル1000金融株指数の300%
金融株・ベア3倍ETF(FAZ)→ラッセル1000金融株指数の−300%

まだ上場されて間もないETFですのでどのくらい定着するかは未知数です。でも大型株3倍ETFと小型株3倍ETF(つまり上の4つ)については十分な出来高があるのでたぶん定番商品になるでしょう。

反面、エネルギー3倍ETFと金融株3倍ETFの人気はイマイチ。値動きが荒っぽい(平気で一日20%くらい上下します)ETFですから板が薄いのは致命的。
posted by 踏み上げ太郎 at 11:39| Comment(6) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月25日

空売り規制を機会にもう一度ETFの仕組みを考え直してみる

先週の金曜日にアメリカの証券取引委員会が金融株に対する空売り規制を発表したのは皆さんもたぶん、ご存知だと思います。

この措置は金融セクターに関連するETFにも影響を与えています。

そこで今日は空売り規制というものがETFに与える影響から始まって、そもそもETFはどういう仕組みで運営されているのかという点まで掘り下げて復習してみたいと思うのです。

まずアメリカの証券取引委員会が金融株799銘柄を空売り禁止指定した理由は、折からの金融不安の状態で空売りによる金融株の作為的な値崩しを放置していたら、たいへんなことになってしまうという危機感によります。

ETFは対象外
ところがETFは今回の措置の対象外でした。そこで「個別株を空売り出来なくても、ETFを空売りすればよい」という法の抜け穴が出来たわけです。空売りを仕掛けたい投資家にとって、これはラッキーな見落としですね。

ところが実際はETFによる空売りは必ずしも期待通りの成果を上げられない状況になっています。

金融関連のETF
それを説明するにあたって、先ず代表的な金融セクターのETFを紹介します。

iShares Dow Jones US Financial Services Index Fund(IYG)
これはダウジョーンズ社の出している金融株指数をなぞるように設計されたETFです。ETFの規模としては純資産が3億ドル程度と、すこし小さめです。

組み入れ銘柄は:

バンカメ (BAC) 11.3%
JPモルガン (JPM) 10.9%
シティ (C) 7.7%
ウエルス・ファーゴ 7.2%
ゴールドマン (GS) 5%

などです。

もうひとつ、代表的なETFとして次のようなものがあります。

Financial Select Sector SPDR Fund (XLF)

こちらは純資産が67億ドルと規模が大きいです。

組み入れ的には:

バンカメ (BAC)8%
JPモルガン (JPM)7.8%
シティ (C) 6.1%
AIG (AIG)5%
ウエルス・ファーゴ (WFC)5%

などとなっています。なお、こちらのETFの方が銘柄の分散が効いています。

最後にベア型の商品も紹介しておきます。ベア型というのはマーケットが下がると上昇するように設計されている商品です。

ProShares Ultra Short Financials (SKF)

なお、この商品は上記のダウジョーンズ金融株指数に−2Xで連動するように設計されています。言い換えれば、ダウジョーンズ金融株指数が1%下がると、SKFは2%上昇するように設計されているわけです。

すると最初に紹介したIYGが1%下がるとSKFは2%上昇しないといけない計算になるわけですね。

ところが今週のこれらのETFの動きを見ると、かならずしも所期の設計通りに動いて呉れませんでした。これはどうしてでしょう?。

それは折角ETFが金融株指数をなぞるように設計されていても、実際には空売り規制があるためにETFの値段を指数そのものに近づける作業に支障をきたしてしまったことが影響しています。

ETFはどうやって指数を追いかけるか?
毎日、場が引けた後、ETFは「ポートフォリオ・コンポジション・ファイル(=PCF)」という表を作成します。その表はそのETFの持ち株内訳とほぼ一致します。いま、指定参加者(AP=Authorized Participant)と呼ばれる金融機関(=証券会社などです)はこの表と一致するひと揃えのポートフォリオを指定された信託機関に届けます。これと引き換えにクリエーション・ユニット(=creation unit、通常はそのETF5万株ないしは10万株に相当します)と呼ばれる受益証券を受け取るわけです。

それでは証券会社はなぜそんな面倒なことをしてクリエーション・ユニットを貰いに行くのでしょう?

いま、仮に或るETFがザラ場中に凄く人気になって、そのETFのなぞるべき指数そのものより勢い余ってかなり上昇してしまったと仮定します。その場合、証券会社は「あ、ETFが割高になっているな」とわかった瞬間、そのETFを場で空売りするわけです。そうしておいて今度は指数そのもの、つまりそれは上の説明におけるPCFの持ち株一覧表に他ならないわけですけど、その「現物株」を自社の在庫、ないしは場で買い揃えるわけです。そして場が引けた後でそのセットを持ち込み、代わりにクリエーション・ユニット、つまり5万株ないし10万株単位のETF新株を受け取って、それで受け渡しを完了するというわけです。

上の議論は難しい言葉で言えば、一種の「鞘取り」、英語でいえばアービトラージです。

さて、ここで大事なことはそういう指定参加者による活発な鞘取り(=それはETFが指数を正確になぞってくれるためには無くてはならない営利活動なのですが)を促進するためには、ETFを自由に空売り出来ると同時に現物株も空売り出来る必要があるということです。

現物株の空売りが必要なケース
いま、ETFの場でついている値段が、指数そのものより大幅に低くなってしまったケースを考えてみたいと思います。その場合、指定参加者である証券会社の鞘抜き方法としては割安になりすぎているETFを場で買って、それと同時にPCFの一覧表に出ている銘柄を空売りしてやれば良いわけです。証券会社は場で拾い集めたETFを5万株、ないしは10万株という束にして「これを差し出す代わりに現物を下さい」と言うわけです。そして空売りした分の受け渡しを貰った現物株でつけるというわけです。この場合、場で拾った5万株、10万株単位のETFを束にして持ち込む動作をリダンプション・ユニット(=Redemption unit)と言います。

空売り規制のもたらす問題
さて、ようやく今日の肝心の本題になるわけですけど、今回のように「金融株の空売りは、まかりならぬ」という事が宣告されると上のリダンプション・ユニットを作る作業が出来なくなるのです。

また、ProShares Ultra Short Financials(SKF)の場合、2倍の逆相関の動きを保証する、証券会社が提供するデリバティブの現物ヘッジが出来なくなります。(これはノーツと呼ばれる店頭デリバティブを活用したETFの「変形」ですけど、議論が細かくなるので今日は割愛します。)

そんな、こんなで、空売り規制発表後の上記のETFはどうも値動きが指数から乖離しがちだし、鞘取りが自由にできないこともあってか、出来高的にも期待はずれでした。

posted by 踏み上げ太郎 at 10:43| Comment(3) | ETFの紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月09日

ETFの動きから経済を占う

今日はETFの株価の動きから、逆に経済の動きを占ってみようという話です。

普通、宅建業者や日曜大工ショップは景気の先行指標であると言われています。また、銀行株のパフォーマンスも経済全体の動きに先行します。

宅建業者や日曜大工ショップの株ばかりを組み込んだETFにSPDR S&P Homebuilders ETF(ティッカー:XHB)というのがあります。

次に銀行株ではKBW Bank ETF(ティッカー:KBE)というのがあります。

さて、これらのETFは最近の相場の悪い環境の中でも意外なほど堅調に推移しています。過去一ヶ月のパフォーマンスは:

XHB +23.4%
KBE +11.3%

でした。

これは米国の住宅市場が近く底打ちすることを暗示しているように思います。

その一方で、新興国の旺盛なインフラ投資需要や食生活の向上を反映して、これまでどんどん上がってきた金属、鉱山関連株や穀物、食品関連株は動きが冴えません。

関連ETFとしては:

Market Vectors Agribusiness ETF (ティッカー:MOO)
SDPR S&P Metals & Mining ETF (ティッカー:XME)

などがあります。過去1ヶ月のパフォーマンスは:

MOO −12.3%
XME −18.8%

となっており、未だ底値模索の過程にあります。これは新興国の経済の減速に今後細心の注意を払う必要があることを示唆していると思います。
posted by 踏み上げ太郎 at 11:23| Comment(2) | ETFの投資戦略 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月27日

身の回りに転がっている投資アイデア

『ダイヤモンドZAi』の10月号を編集者の方に送っていただきました。

どうもありがとう!。

それを見ていて、「あっ!」と思わず叫びたくなるような記事に出くわしました。まさに、「イヌも歩けば棒に当たる」だな、こりゃ。

その記事というのは;

「賢い投資家のための投信選び3か条」

というタイトルの記事です。(84ページから)

若林雄二さんと言う方が「シャープ・レシオとアルファをちゃんと見て、投信を選んでください」と提唱しているわけだけど、そこで示された:

投信BEST50

というリストを見てぶっ飛んだんです。

なんとバイオテクノロジーとかゲノムのファンドがごろごろ入っているからです。

トップ50の投信のリストをパフォーマンスの高い順に並べ替えると、上位20のうちに5つもバイオないしゲノムのファンドが入っている、、、。

因みに公募投信3198本がユニバースなんだそうです。

しかもシャープ・レシオやアルファを加えるとバイオ、ゲノムはかなりいい線行っているのです。

いまBEST50に選ばれたファンドの少なからぬ部分は所謂、ベア型ファンドだったり、コモディティー・ファンドです。

ロングという考え方で、このさいベア型ファンドを除去し、しかもコモディティー・ファンドはこの調査(8月1日時点)以降もどんどんパフォーマンスを落としている筈だから(=原油安)、それを差し引けば、ほぼバイオ、ゲノムの独壇場なんです。

バイオやゲノムと言えば、「駄目ファンドの見本」とずっと思われてきました。それがこれだけ上位に食い込んでいるということは、このセクターに何かが起こっている、、、そういうフレッシュな発想を持つべきだと思うんです。

あ、念のために言葉を添えておくと、僕はこの記事にリストアップされた投信はどれも買いたくないと思います。その理由は販売手数料がバカ高いから。

バイオをプレイするなら、ひとつ前のエントリーで紹介したIBBを買えばそれで十分。


posted by 踏み上げ太郎 at 09:56| Comment(2) | セクターETF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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